九想庵

埼玉の田舎で暮らしています

ささやかなボディーブロー

 11時前、このところ毎晩しているお灸を、女房にしてもらった。
 おれにはお灸が合うようで、腰痛がずいぶん良くなった。
 そのとき、なにげなく女房がいった。
「結婚したの後悔してるんだ」
「おれと?」
「もっと金持ちとすればよかった」
「………」
 夕方から、女房は明日会社に行くことに憂鬱になっていた。「もっと楽な仕
事したいな。2、3時間のパートがいいな」なんて呟いていた。
「すいませんね。収入が少なくて」
 お灸が終わり、立ち上がりながらおれはいった。
「いいのよ。私が自分で決めて結婚したんだから、しょうがないよ。嫌みなこ
といってゴメンね」
 そういって、女房は寝た。
 おれは、会社の仕事をExcelでやりながら、まいったな、と思った。
(そりゃ、こんな低い収入しかとれないおれが悪い。おれだって、一所懸命や
ってんだけどな。まいったな)
 彼女だって分かっている。分かっているけど、明日会社に行くことを考える
と憂鬱になり、そんなこといってしまったのだろう。
 朝、女房は電話で実家の母と話したとき、弟のボーナスが百万円ぐらいだっ
た、と聞いた。そうだろうな、複写機の一流メーカーだ、そのぐらいもらえる
だろう。おれなんか、その三分の一だ。以前の会社のときはおれだってそこそ
こもらっていた。
 おれの収入は安い。分かり切ってることなので、それほど落ち込まないが、
あれから2時間ほどたち、じわじわと自分が情けなくなってきた。
 昼間、女房と所沢の西武デパートに行き、宝くじを20枚買った。おれは、
ロト6というのも買った。
 しみじみ、当たらないかな、と思う。
 当たるはずないだろうな。