九想庵

埼玉の田舎で暮らしています

少年H

この小説をやっと昨日読み終えました。
発売されたときに読みたいと思いながら読めずにいた。
なにしろあの厚さで上下2冊というボリュームは、
私の生活の読書時間を考えると手に取る気がしなかった。
恥ずかしいのですが、
私の暮らしに本を読む時間はほとんどないのです。

楽家のマスターが、
この夏、千葉の海の家に出稼ぎに行ったとき、
ヒマな時間が多すぎて本を沢山読んだといっていた。
その中に「少年H」(妹尾河童 著)があって、
「いい小説だった」と私に勧めてくれた。

私はこんどの入院はいいチャンスだと思い、
図書館で「少年H」を探した。
パソコンで検索すると1階の児童書のところにあった。
これまで何度か探してみたがみつからなかったので、
おかしいなと思っていた。

入院して、さあ読もうと意気込んだが、
手術後にベットで読むには本が重いと考えた。
最初は、文庫本の「火車」(宮部みゆき著)にした。
この小説も長編で読了するのに時間がかかった。
手術後、薬のせいでよく眠っていたので、
本があまり読めなかった。
この小説は、'93年の山本周五郎賞を受賞した。
読んでいるときはなかなか面白かったが、
読み終えてみると少し物足りなさを感じた。

入院中に「少年H」の上巻を読んだ。
しかし、退院してしまうといつものことで
なかなか下巻が読めなかった。
昨日、御茶ノ水までの行き帰りと、夜、家で読了した。

前置きが長くなりました。
「少年H」は、神戸、須磨地区に隣接する本庄町に住む
Hというあだ名の「ハジメ」少年の
太平洋戦争前から終戦までの物語だ。
私はこの暗い時代の話が苦手です。
読み始めて、ちょっとイヤだな、と思った。
ところが読んでいくうちにその気持ちは消えた。
それは、このHの感性を通して描かれるこの時代が、
これまでいろいろ読んできたものと少し違った。
少年Hは、その時代を批評しながら生きていた。
軍国主義に染まってゆく日本をきっちり観察していた。

洋服屋の父は大きな心でHを見守り、
熱心なクリスチャンの母は、
積極的にその時代を生きていた。
沢山のエピソードがつながり重なっている。
どれも私の興味を引きつけはなさない。
それにしても、Hはいつも絵を描くことから離れない。
そして常に新聞を読んでいた。
このことに私は感心した。