先週の土曜日、私がこたつに横になっていると、
Kが来て私のパソコンを立ち上げた。
原稿用紙に印刷したいんだという。
プリンターは私のパソコンにしかない。
「なんで原稿用紙に印刷しなくちゃいけないいだ。
読みずらいと思うけどな」と私がいうと、
「学校のそういう決まりなんだ」とKがいう。
手書きするには枚数が多くて面倒くさいという。
女房が来てパソコンをいじりはじめた。
「こういうのはママにまかせて」
マージンがどうのこうのと女房がやっていた。
そのうちきっちり原稿用紙の升目に文字が入ったと
ふたりで喜んでいた。
女房は以前時計メーカーにいたとき、
いろんな書類を作る仕事をしていた。
在宅で1枚いくらの文章入力のバイトもしていたので、
そういうことには明るかった。
日曜日の午後、Kが印刷をはじめた。
「なんなんだ?」と訊くと、
「卒論だよ」という。
「スキャナーの使い方教えて」
とKがいうので教えた。
ある本の「包囲中の両軍の配備」という
地図のような図を取り込んで、原稿用紙に印刷した。
「テーマはなに?」
「オスマントルコの………」
月曜日が締め切りのようだった。
火曜日だったか、晩飯のときUに訊いた。
「Uの卒論のテーマは?」
「いったって分かんないよ」
「いつの時代の頃なんだ?」
「古代」
もう私はそれ以上訊けなかった。
息子たちは、違う大学の史学科にいる。
Uが日本史、Kが西洋史だ。
それなりに勉強したのかな。
私は高卒なので、卒論なんて経験がない。
ひとつのこと研究して、
論文を書くなんて面白いだろうな。
息子たちの大学生活も終わりが近づいている。