九想庵

埼玉の田舎で暮らしています

「命」読了

何年か前に買った柳美里著「命」(小学館)を読んだ。
私は図書館で借りた本を優先して読むので、
買った本は後回しにするというクセがある。

2001年9月9日の九想話「東由多加」に、
この本のことを書いたから、そのころに購入したのか。
それともそれよりずっとあとだったか、
よく覚えていない。

読み終えて思ったのは、バカな女だな、だった。
恋することはいい、すばらしいことだ。
相手が既婚の男性でもしかたない。
縁があったのだから…。
でも妊娠してしまったことがまずい。
生まれてくる子どもが可哀想だ。
やはり子どもは親が揃っていたほうがいい。

相手の男は卑怯で情けないなやつだ。
柳美里とつきあいながら他にも女がいた。
配偶者との関係は冷たくなっているといいながら、
よそにもつきあっている女がいた。
「あそびだったら、避妊ぐらいしろ」といいたい。

憧れていた東由多加にも失望した。
生活力のない愚鈍な男という印象だ。
治療をしても1年も生きられないほど
の状態になるまで癌を放っておくなんて。
30年前、芝居の稽古場で見た寡黙な東。
稽古のときは役者、スタッフを容赦なく怒鳴っていた東。

本の後半、赤ちゃんが生まれ、
授乳や沐浴であたふたする2人のことが描かれている。
さも一大事とばかりに書いてある。
私からすれば笑ってしまう。
たかが1人じゃないか。うちは双子だった。
なんといっても金がなかった。

世の中には未婚で子どもを産んだ女性はたくさんいる。
金もなく、手伝ってくれる人もいなくて
子どもを育てた女性が。
柳美里の場合、芥川賞作家ということもあり、
出版社の担当編集者や仲間がいる。

本の帯には、有名人たちの賞賛する文章が書いてある。
私の感想は、そんなにいい本かな、です。