九想庵

埼玉の田舎で暮らしています

妻と行く卒業式はくもり空

 感想は?卒業の朝子に訊けばつまらなそうに「べつに」という
 妻と乗る学バスの窓流れゆく川越の街息子の三年

 今日は、Uの卒業式だった。
 本川越駅から学バスに乗り15分、田畑の中にある私立の男子校です。
 男子ばかりというのは華やかさはないが、それなりにいいもんですね。
 しかし、保護者はほとんど母親ばかり、男は数えるばかりです。なんでかな
と思う。「男が子どもの卒業式なんかに行ってられない」「仕事が忙しくてそ
れどころじゃない」なんていう声が聞こえてきそうで、私も少々気が引けては
いる。
 私も仕事は忙しい。2月には土日出勤して2週間続けて働いた。先週の土曜
日にも出勤した。昨日は、今日休むために残業をした。自動車業界の3月は、
生産台数が多いんです。
 そんなことをしても息子の卒業式には出たかった。あの野郎が、どんな学校
で何考えて暮らしてきたのか、少しでも知りたいと思うのです。
 会場の体育館のうしろ半分は、母親たちでいっぱいだ。その前に在校生が座
っている。12時10分前、卒業生が入ってきた。Uもすました顔で歩いてき
た。
 開会の辞、校歌斉唱、学事報告のあと、卒業証書授与が始まった。担任の先
生が生徒の名前を呼び、生徒がそれに淡々と答えていく。全員が呼ばれ、総代
一人が校長から授与された。Kの高校のようなことはなにもなかった。
 そのあと、各種賞状授与だった。優等賞、努力賞、皆勤賞、生徒会功労賞な
どの表彰だ。式が始まる前、連れ合いが「うちのUにはこんなの関係ないよ。
なにしろ努力が嫌いなんだから」と笑っていた。大学の入学の書類に「学生カ
ード」というものがあって、そこに趣味とか長所短所を書く欄があった。Uは
そこに、「趣味 マンガ」「長所 (空白)」「短所 努力が嫌い」と書いて
いた。それを見て二人で大笑いしたことがあった。
 でも、「式次第」をよく見ると、「クラブ功労賞」の漫画動画研究部に息子
の名前があった。名前を呼ばれて立ったUの背中を見つめながら、家でなんに
もいわないあの野郎、あいつなりにクラブ一所懸命やってたんだな、と思った。
夕方、謝恩会から帰ってきた連れ合いに聞いて初めて知ったのですが、有は、
漫画動画研究部の部長をしていたそうだ。彼女も今日まで知らなかった。謝恩
会で担任、副担任、クラブの顧問の先生にお礼の挨拶をしていたときそのこと
を知ったそうだ。
 式が終わり、そのとき司会の教師が「各クラスのホームルームを見学したい
父母はしていって下さい」といった。私たちは行きました、3年B組へ。担任
が賞状を渡したり、これからのことを話していた。Uがいた。Uは、この教室
で1年間なにを考え、悩み、友と話していたんだろう。
 Uの卒業式も終わった。
 あ~あ、終わってしまった、という感じです。私は、他の父親に比べるとそ
こそこ息子たちの学校の行事に参加してきた。家の外のあいつらのこと知りた
かったのです。
 もう息子たちのことはほっといて、自分の“これから”を真剣に考えよう。