九想庵

埼玉の田舎で暮らしています

カーリングの町、軽井沢

昨日、女房は仕事が終ってから軽井沢に来る予定だった。
なので私は、職場から家に戻り、台所の食器を洗い、部屋をざっと片付けた。
湯船も洗った。女房が家に着いたらすぐお風呂にお湯を入れようと思った。
私の家の風呂は、お湯を沸かすのではなく、お湯を入れるタイプなのです。
21時ごろまで眠って、21時45分ごろに中軽井沢の高速バスの停留所に迎えに行く計画を立てた。
車で迎えに行くのでアルコールは飲めないから、起きていてもしょうがないと考えたのです。
布団に入り真っ暗な部屋で目をつぶった。
5分ほどたったころ、携帯電話がなった。
女房からの電話だった。
「切符買えなかった。明日から3連休で満員だったの」
「そうか、じゃ、明日来ればいいよ」
「うん、明日行くわ…」
元気のない声だった。
そうだろうな。
彼女は先週から「来週行くからね」と嬉しそうにメールをくれていた。
もう、軽井沢に来ることが楽しくて楽しくて、しかたのないひとなんです。
朝、出勤するときに軽井沢に行く用意をして家を出たはずだ。
仕事を終えて池袋の高速バスの営業所に行って切符を買おうとしたら、満員でチケットはないといわれた。
女房はいつものようにとうぜん切符は買えると安易に考えていた。
ところが世の中、3連休だ。
こんな寒い季節なのに軽井沢というところは特別なんですね。
真冬でも来たい観光客がいる。
なにしろ3連休となると中軽井沢のスーパーのツルヤが買い物客であふれるんだから。
“地元民”の私にとっては迷惑な話です。
なんか女房の元気のない声が気になった。
そのとき私の頭の中で光ったものがあった。
新幹線で来ればいいんだ、と思った。
私と女房の頭の中に、軽井沢に来る交通手段として新幹線はなかった。
高速バスは、回数券を買うと片道2,000円なんです。
新幹線は、上野駅から軽井沢駅まで5,570円です。
でも、昨日はもう新幹線しか方法はないと思った。
夫婦生活を円滑にするためにも、「ここは新幹線で来い」というしかなかった。
すぐ女房にメールした。
「新幹線で来れば」
送信してからすぐ、次のメールを書いた。
「せっかくの休みなんだから今日来ればいいよ」
女房から電話が来た。
「今、小竹向原なんだけど、新幹線で行こうかな」
女房はそれから池袋に戻り、山手線で上野駅に向かった。
私は布団から抜け出し、パソコンのスイッチを入れネットの「乗り換え案内」を立ち上げた。
上野には19時10分ぐらいには着くと判断したので、19時半ぐらいの新幹線はないかなと入力した。
上野駅19時30分発、軽井沢駅20時31分着、しなの鉄道20時49分発、
中軽井沢駅着20時58分着、という新幹線があった。
それを女房にメールした。
19時25分に電話が来た。
「今、上野駅。もうすぐ新幹線が来る」
私はもう眠れない。
最初は、中軽井沢駅に迎えに行こうかなと考えていたが、軽井沢駅まで行っちゃおうかなと思った。
それまでパソコンに向かいその日の九想話を書いていた。
しかし、やはり軽井沢駅までは面倒だ、中軽井沢でいいか、などとうじうじ考えていた。
でも、書いているうちにだんだん軽井沢駅まで迎えに行こうという気持ちになった。
20時を過ぎた。
私の家から軽井沢駅までは10分もかからない。
駅の駐車場に車を停めたり、駅まで歩いて行くことを考えたら、
20時10分には家を出なければと思った。
そうこうしているうちに20時10分を過ぎてしまった。
今日は寒いから、中軽井沢駅まで来てもらおうかなと思った。
しかし、軽井沢駅まで迎えに行くとあのひとが喜ぶかな、
と想像すると居ても立ってもいられなかった。
いきなり着替え、車に乗って18号を軽井沢駅に向かった。
駅の駐車場に車を停め、歩いて新幹線の改札口の前に着いたのが20時25分だった。
まもなくあさま545号が到着すると構内アナウンスがあり、新幹線の入ってきた音がした。
そして乗客がどんどんあらわれた。
その中に女房がいた。



新幹線の改札口の床にこういうことを書いたものがあった。
「ようこそ、カーリングの町、軽井沢へ」
私は、“軽井沢はカーリングの町”なんだと思った。