九想庵

埼玉の田舎で暮らしています

小説 エッセイ

キネマの神様

今日、「キネマの神様」(原田マハ 著 文春文庫)を読み終えた。私はこのひとの小説を4・5冊読んでいると思う。この作家の小説は好きです。この小説もよかった。 麻雀と競馬と映画が大好きな父親が心臓の手術で入院するので、代わりに娘の歩が、父母の勤める…

ツリーハウス

「ツリーハウス」(角田光代著 文春文庫 483ページ) を先週読了した。中華料理店「翡翠飯店」を営む一家三代を書いた長編小説です。ものすごい小説を角田光代は書いたな、というのが私の感想です。祖父の死をきっかけに、自分の家のルーツを祖母とともに中国…

月と雷

「月と雷」(角田光代著 中公文庫)を読んだ。2週間ほど前にこの人の書いた「空中庭園」(文春文庫)を読んだばかりです。(この小説もすごかった)角田光代の小説はこの他のは読んでいない。小説を読んでいないが、テレビドラマの「八日目の蝉」を観ている。 …

海の見える理髪店

オール讀物の直木賞発表号でこの小説を読んだ。ここには「海の見える理髪店」「いつか来た道」「成人式」の三編が載っていた。作者は荻原浩です。「海の見える理髪店」はいい小説だと思った。床屋の髪を切るオーナーの心と散髪してもらう客の気持ちがよく出…

若者の酒離れ

asahi.com の beReport というところに「最近の若いヤツは…酒を飲まないのだ 酔っぱらいはダサい!? 」というコラムがあった。 「最近、酔いつぶれる若者がめっきり減った。 飲み方がおとなしくなっただけではない。 酒を飲む若者自体も減っている。」 「特…

「おれ」という女の子

サイト「茨城王」の茨城弁大辞典の「俺」のところに次のように書いてある。> 通常「俺」は男が自分のことをあらわすのに使うが、> 茨城ではなぜかおばあちゃんが自分のことを「俺」という。> いったい何歳から使うのだろう。> 中年の女性は「俺」とは言わな…

上原 隆

楽家の飲み仲間のSさんからいただいた「雨の日と月曜日は」上原隆著 新潮文庫を先週読了した。私はこの本を読みながら、同時に文芸雑誌の小説なども読んでいたので読み終わるのが遅かった。私の場合どうしても図書館で借りてきた本を優先して読む傾向がある…

ネット本

今日の荒川洋治の「日本全国8時です」は、ネットから生まれた書籍を取り上げていた。「電車男」と「実録鬼嫁日記」の2冊だ。「電車男」は、電車内で絡む酔っ払い爺から女性を助けた、ひとりのアキバ系オタクの青年が、助けられたお礼を送ってくれた彼女をデ…

男の分別学

私がかねてより、心から崇拝している文章家がいる。その方は、東海林さだおです。今日読んだ、オール讀物4月号の「男の分別学」「偉業!立ち食いそば全制覇(Ⅱ) 『富士そば』への道はまだまだ続く」で、その思いをあらたにした。食というものを、人間の業と…

友人の小説

富山の友人から1月に送られてきた同人雑誌を1週間前ほどに読んだ。もっと早く読もうと思っていたのだが、なかなか読めなかった。友人の小説はよかった。文章も以前のものと比べるとよくなっていた。ストーリーはまったくの創作なのだろう。エンディングに、…

老いてこそ 電脳暮し

「老いてこそ 電脳暮し」水上勉著(光文社<知恵の森文庫>刊)を読んだ。水上勉が70歳で心筋梗塞になり、心臓の三分の二が壊死して、三分の一の心臓で生き残った。そんな体でも文章を書きたい欲求はあるのだが、「原稿用紙に万年筆をつかってきたが、筆圧が重…

ブックナビ

毎朝聴いている「タケロースタンバイ」(TBSラジオ)の中で、木曜日の8時20分頃から「ブックナビ」というコーナーがある。本の雑誌社・顧問の目黒考二(文芸評論家北上次郎)と書評家の岡崎武志が交代で本の紹介をしている。2月3日は、荻原浩著「母恋旅烏」だっ…

いい歳して

かなり落ち込んでいます。自分を情けなく思っています。おれはやっぱり小説を書きたい。しかし、去年から書こうとしているがまったく書けない。ストーリーをいろいろ考えているのですが、なんかそれらがつまんなくて先にいかない。小説を書くのをやめようか…

パイロットフィッシュ

今日、大崎善生著の「パイロットフィッシュ」を読了。こういう小説が私は好きだ。ネットで検索してみたら、この本はかなり売れた本らしい。吉川英治文学新人賞を受賞している。アダルト雑誌の編集部に勤める主人公に、19年ぶりにむかしの恋人から電話が来…

少年H

この小説をやっと昨日読み終えました。発売されたときに読みたいと思いながら読めずにいた。なにしろあの厚さで上下2冊というボリュームは、私の生活の読書時間を考えると手に取る気がしなかった。恥ずかしいのですが、私の暮らしに本を読む時間はほとんど…

若者の酒離れ

asahi.com の beReport というところに「最近の若いヤツは…酒を飲まないのだ 酔っぱらいはダサい!? 」というコラムがあった。 「最近、酔いつぶれる若者がめっきり減った。 飲み方がおとなしくなっただけではない。 酒を飲む若者自体も減っている。」 「特…

「おれ」という女の子

サイト「茨城王」の茨城弁大辞典の「俺」のところに次のように書いてある。> 通常「俺」は男が自分のことをあらわすのに使うが、> 茨城ではなぜかおばあちゃんが自分のことを「俺」という。> いったい何歳から使うのだろう。> 中年の女性は「俺」とは言わな…

夏のソナタ

なんでもない整形外科の夏を舞台にコミカルに描かれた苦笑のラブストーリー男は52歳。ありふれた中高年の体型を醜く晒し暮らしている。自分の生き方を大切にしてる妻と双子の息子。むかしのまとまりのあった暖かい家庭を願う男は、ひとり砂をかむ空しい思…

恋物語への誘い

“恋”というものに、もうすいぶん縁がない。できるものならしてみたいけど、そういう元気はいまの私にはない。オール讀物5月号の特集「恋物語への誘い」の中の藤田宜永の「土鍋」という小説を読んだ。53歳の電子部品メーカーの社長が、29歳の女性と恋を…

悲しい読書歴

私の生まれた家には本がありませんでしたね。悲しいくらい本がなかった。本を読むという習慣を持っている人が、家族の中にいなかったんです。私が小学4年のころに読んだ本で覚えているのが、「ジャングルブック」だったかな。5、6年生のころは「シートン…

千の風になって

先週、本屋の平台に沢山積んであった本を手に取った。「千の風になって」新井満 著( 講談社 )という本です。ちょっと見てみようと思ったのだが、ついつい引き込まれて、最後まで読んでしまった。「千の風になって」は、作者不詳の英語詩を、新井満が翻訳し…

「命」読了

何年か前に買った柳美里著「命」(小学館)を読んだ。私は図書館で借りた本を優先して読むので、買った本は後回しにするというクセがある。2001年9月9日の九想話「東由多加」に、この本のことを書いたから、そのころに購入したのか。それともそれよりずっと…

へちま賞

ASAHIネットで「私のコラム・へちま賞」というエッセイの募集が4月にあった。ASAHIネットの会長が、「へちま亭」というコラムを毎日書いていた。それが1000回続いて終了となった。それを記念してつくられた賞です。毎日エッセイらしきものを書いてる私とし…

博士が愛した数式

昨日の深夜に読了した。この小説を読み終わって思ったのは、数学って素敵だなということだった。「素数」「完全数」「虚数」「友愛数」数字の魅力を、人間の人生にからめて物語にしてしまった作者小川洋子はすごい人だと思った。この物語の主人公である家政…

読書の前に

「博士が愛した数式」を読みたい、と今日は朝から思っていた。家に帰ったら読もうと、かたい決意をしていた。本は、15日に買った。現在、64ページまで読んでいる。仕事が終わり家の近くの整形外科で腰のマッサージをしてもらった。途中、女房から頼まれ…

数の不思議を小説に

昨夜、「24時間以内に人質解放をする」という犯人側のメッセージはどうなるかな?と思い、4/12の午前3時まで起きていた。ラジオ深夜便の1時台の〔ないとエッセー アンコール〕「数の不思議を小説に」という、作家小川洋子の話がよかった。久しぶりにいい…

鹿島茂

今朝、作業所からパチンコ台の会社に向かうとき、カーラジオをかけると朗読が流れた。2月から私は、パチンコ台のガラスを磨く仕事をしている。週に2日行っている。今日は、ふたりの子を連れて行った。いい文章だなと思った。洒脱できどりがなく作者の気持…

パラレル

文學界2月号に載っている長嶋有の長編小説「パラレル」を読了した。この小説は、これまでの彼の中で一番いい。七郎と友人の津田との関係がよく書けている。離婚した“元”妻とのこともいい。こういう小説を私も書きたい。(今夜こそはこの小説を読み終えよう…

縦書き文章

ちょこっと早いチョコ

8時50分、作業所の前の駐車場に車を停めた。作業所の入口(玄関などと呼べるものではない。シャッターを開けてあるだけなのです)に、 I さんが緊張して立っていた。手には小さな箱を持っている。職員のHさんが、外にある共同トイレから出てきた。26…